ご挨拶

芥川(間所)紗織アーカイブ実行委員会は、芥川(間所)紗織の作品とその生き様を風化させることなく後世に残し、1 人の画家としての芥川(間所)紗織を日本の現代美術史の 1 ページに明確に位置づけることを目的として 2022 年に設立し活動してまいりました。その活動の一環として芥川(間所)紗織が生誕 100 年を迎える 2024 年に、美術館に所蔵されている紗織作品を各美術館主催の展覧会の中で展示していただくというプロジェクト Museum to Museums を企画いたしました。

このプロジェクトは全国 10ヶ所の美術館のご協力のもとに実現したものであり、「軌跡を回顧する旅へ」という副題にもあるように、1つの美術館だけではなく、紗織の作品を所蔵する他の美術館へも足を運んでいただきながら、芥川(間所)紗織という人物そのものにも興味や関心を持っていただける機会を創出することを趣旨としています。

プロジェクト名のMuseum to Museumsには、美術館の展覧会をめぐり歩くことによって、より多くの作品に触れていただきたいという私たちの思いが込められています。

芥川(間所)紗織アーカイブ実行委員会
代表 芥川柚実子

お知らせ

プロジェクトMuseum to Museumsとは

  • 全国 10 カ所の美術館のご協力により、各館の常設展のなかで、期間限定で作品を鑑賞いただけます。
  • 個々の作品を見るだけでなく、1 人の画家としての芥川(間所)紗織の生涯や生き様を立体的に捉える機会です。
  • 生誕 100 年という節目の年に、日本の現代美術史の中に紗織が活躍したその時代の潮流を捉え直す機会です。
  • ひとりの画家の作品を複数の場所を通してみたときに見えてくる紗織の独自性や時代性に気づける機会となります。

※なお、プロジェクト Museum to Museums は、各美術館が主催する展覧会等をご紹介し、関連情報をご案内させていただくものであり、 当委員会が展覧会等を主催・企画するものではありません。

紗織作品の特徴について

  • 豊かな色彩や、6メートルを超える作品等の大胆なサイズ感からもたらされる感動は、実物を目にすることでしか体験できません。
  • 溶かした蝋で布に絵を描き染色をして、蝋を落とし水洗いをする工程を繰り返し1枚の多色の作品を作り出す「ろうけつ染め」の技法を駆使し、色彩豊かに表現しています。
  • 強烈な叫び声を上げているような女性を描いた「女」というタイトルの作品を数多く制作しています。それらの作品は紗織作品の傑出した特徴であり、自画像ともいわれています。
  • 日本文化の源流である古事記などを愛読し、そこに現れている神話や民話の登場人物を独自の解釈で仕上げた作品は、いつまでも色褪せることなく、そのパワフルなエネルギーは観る者を圧倒させます。
  • 豊かな意欲にあふれ、常に新しいテーマや手法を模索して、渡米後に無機的な抽象画を描くことで作品が一変していることは、画家として新境地を開き続けようとする芥川(間所)紗織の生き様そのものです。
  • 紗織は多くのパステル画を残しています。これらのパステル画は、芥川(間所)紗織の別の側面を表現しており、またろうけつ染めの作品の下絵と思われるものもあります。今回初めての公共美術館での展示となります。それらの制作意図についての研究が現在進展しつつあり、今後に期待が持たれています。

プロフィール

芥川(間所)紗織

1924年 愛知県渥美郡高師村(現・豊橋市)に生まれる(旧姓は山田)
1947年 東京音楽学校(現・東京藝術大学)本科声楽部を卒業
1948年 芥川龍之介の三男、作曲家の芥川也寸志と結婚
1950年猪熊弦一郎に油絵を、野口道方にろうけつ染めを学ぶ
1954年第 4 回モダンアート協会展に出品し新人賞受賞、女流七人展を安部真知、織田リラ、小串里子、オノサトトモコ、草間彌生、森慧と開催
1955年岡本太郎の勧めにより、吉仲太造、藤沢典明らと共に二科会に移り、第 40 回二科展岡本太郎室に染色作品を出品して特待賞受賞。村松画廊で個展を開催し、神奈川県立近代美術館の「今日の新人・1955 年展」に出品
1956年サトウ画廊で行われた第 1 回 4 人展を池田龍雄、河原温、吉仲太造と開催。難波田龍起、福島秀子、藤沢典明、建畠覚造、吉仲太造らと共に岡本太郎が主宰する「現代芸術研究所」のメンバーとなる。第 2 回 4 人展を池田龍雄、河原温、吉仲太造と開催し、《神話より》を出品
1957年村松画廊で第 3 回個展を開催し、代表作と言われる《古事記より》を出品。芥川也寸志と離婚
1958年アメリカに出発。ロサンゼルス・アートセンタースクールにてグラフィックデザインを学ぶ
1959年ロス・カウンティミュージアム公募展に入選
1960年ニューヨークに到着。第 14 回女流画家協会日米交歓展(ニューヨーク・リバーサイド美術館)に桂ユキ、村尾隆栄、草間彌生とともに在米出品者として参加(山田紗織の名で)
1961年ニューヨーク、アートステューデントリーグのウィル・バーネット教室にて油彩を学ぶ
1962年帰国。昭和画廊で第 4 回個展を開催し、渡米中の作品を出品
1963年第 17 回女流画家協会展に抽象画を出品。建築家・間所幸雄と結婚
1966年病気により死去(享年 41 歳)

各美術館日程

各美術館で異なった魅力の作品をお楽しみいただけます。 ぜひ、旅をするように各地を巡ってみてください。

日程
(2024年)
場所展覧会名展示作品詳細
4/18(木)
〜7/7(日)
川崎市岡本太郎美術館常設展「前衛たちの足跡
岡本太郎とその時代」
詳細
4/20(土)
〜6/16(日)
栃木県立美術館コレクション展I 始まりの美術詳細
6/4(火)
〜10/6(日)
国立国際美術館コレクション1 彼女の肖像詳細
6/8(土)
〜7/21(日)
豊橋市美術博物館コレクション第Ⅱ期美術展示
「挑む女たち〜芥川紗織を中心に」
詳細
6/20(木)
〜7/21(日)
刈谷市美術館コレクション展
「New Collection展」
詳細
6/29(土)
〜9/8(日)
名古屋市美術館常設展
名品コレクション展Ⅱ
詳細
7/13(土)
〜9/29(日)
高松市美術館第2期コレクション展詳細
7/13(土)
〜10/20(日)
横須賀美術館「第2期所蔵品展特集
生誕100年芥川紗織」
詳細
8/3(土)
〜11/10(日)
東京都現代美術館「MOTコレクション」詳細
9/3(火)
〜12/22(日)
東京国立近代美術館所蔵作品展
「MOMATコレクション」
詳細

※会期中に展示替えがある場合がございます。詳細は各美術館のウェブサイトをご覧ください。

見どころ1 初期作品

1953〜1954年ごろの作品

紗織は1950年にろうけつ染めを野口道方に、油絵を猪熊弦一郎のもとで学び始めます。

ろうけつ染めとは、溶かした蝋を筆などで布に塗り、模様を描き、染料でその布を染色し、蝋を落として水洗いする工程を繰り返して一つの作品を作り出すとても手間のかかる技法です。紗織は1954年ごろまでは油彩と染色を並行して制作しながら作風を模索していますが、やがてこの技法を駆使して独自の世界観を表現するようになります。

この頃の特徴は、人物を植物的な形や線でユーモラスに表現しているところにあります。渡米前までの紗織作品に一貫する明るく鮮やかな色彩がすでに用いられている点が注目されます。

A54-002 女・顔Ⅰ豊橋市美術博物館所蔵

《女・顔Ⅰ》

A54-001 女・顔Ⅱ豊橋市美術博物館所蔵

《女・顔II》

豊橋市美術博物館
2024 年 6 月 8 日から 7 月 21 日までコレクション第Ⅱ期美術展示「挑む女たち~芥川紗織を中心に」にて展示

見どころ2 女シリーズ

1954〜1955年ごろの作品

画面の中心に1人の女が立っています。時に叫び、髪を逆立てる女達を紗織は繰り返し繰り返し描きます。紗織は「女」というタイトルでたくさんの作品を描きました。熱い怒りを強く主張する「女」は当時の作家としては全く異質な作品で、1955年の二科展で特待賞を受賞するなど前衛作品を描く新人として脚光を浴びる事になります。自画像とも言われる「女」シリーズの前に立ち、紗織自身の内なる声に耳を傾けてください。

B55-004 女(I)東京国立近代美術館所蔵Photo: MOMAT/DNPartcom

《女 (1)》

B55-005 女(B) 東京国立近代美術館所蔵 Photo: MOMAT/DNPartcom

《女 (B)》

東京国立近代美術館
2024 年 9 月 3 日から 12 月 22 日まで
所蔵作品展「MOMAT コレクション」にて展示

B54-003 顔岡本太郎美術館所蔵

《女 C》
川崎市岡本太郎美術館
2024 年 4 月 18 日から 7 月 7 日まで常設展「前衛たちの足跡 岡本太郎とその時代」にて展示

B55-001 女Ⅺ東京都現代美術館所蔵

《女IV》
東京都現代美術館
2024 年 8 月 3 日から 11 月 10 日まで「MOT コレクション」にて展示

B54-005 女©刈谷市美術館蔵

《女 C》
刈谷市美術館
2024 年 6 月 20 日から 7 月 21 日までコレクション展
「New Collection 展」にて展示

見どころ3 神話・民話シリーズ

1955〜1957年ごろの作品

1955年、紗織はメキシコ美術と出会い大きな衝撃を受けました。そして、その頃愛読していた『日本民族伝説全集』の中の神話・民話を題材にろうけつ染めの手法で描き始め、紗織の代表的な作品の数々がここに生まれます、自ら咀嚼した登場人物を、大胆かつ鮮やかな色彩でダイナミックに描き、テーマに自分自身の洞察を加え、自由奔放な想像力を最大限に展開した作品となっています。特に名古屋市美術館「常設展名品コレクション展Ⅱ」で展示される《古事記より》は幅が6.6mもあり、そのスケールの大きさと紗織のエネルギーに驚かれることでしょう。

C56-006 神話よりⅣ栃木県立美術館所蔵

《神話よりIV》
2024 年 4 月 20 日から 6 月 16 日まで
コレクション I 始まりの美術にて展示


C56-001 「神話・神々のタンジョウ」高松市美術館所蔵

《神話・神々の誕生》
高松市美術館
2024 年 7 月 13 日から 9 月 29 日まで第 2 期コレクション展にて展示

C57-001 古事記より 世田谷美術館所蔵

《古事記より》
名古屋市美術館 2024 年 6 月 29 日から9月8日まで常設展 名品コレクション展Ⅱ にて展示

見どころ4 抽象画

1963〜1965年ごろの作品

1959年から3年間、芥川(間所)紗織はアメリカで抽象画を学び、染色の技法を用いた具象的な前衛絵画を捨て、油彩で平面的な抽象画へと作風を変化させます。それまでの明るく鮮やかな色彩は影をひそめ、2~3色の限られた色彩を使用し、有機的なフォルムで平面的に表現されています。蝋や染料の温度や加減を見ながら迅速に仕上げなければならない染色作品とは違い、下絵のスケッチを何枚も描き周到に準備の上で作品を描いたことが残されたスケッチブックからわかり、現在スケッチブックから抽象画の主題を読み解く研究も進んでおります。画家としての第2の出発点とも言えるこれらの抽象画を眺めると、作家としての意欲がありありとわかります。そしてこれからの活躍が注目される中、あまりにも早く人生を閉じてしまった1人の前衛作家の存在に気づいていただけることでしょう。

D64-001 スフィンクス横須賀美術館所蔵

《スフィンクス》
横須賀美術館
2024 年 7 月 13 日から 10 月 20 日まで「第2期所蔵品展 特集 生誕 100 年芥川紗織」にて展示

《スフィンクス》
東京国立近代美術館 2024 年 9 月 3 日から 12 月 22 日まで所蔵作品展「MOMAT コレクション」にて展示

D63-002 朱とモーブA名古屋市美術館所蔵

《朱とモーブ A》
名古屋市美術館
2024 年 6 月 29 日から9月8日まで常設展 名品コレクション展Ⅱにて展示

見どころ5 パステル画

制作年不明

紗織は染色や油彩の作品制作の間に数百点のパステル画を描いています。それらは作品の下絵的なものもありますが、どれも一つの作品としての価値があります。これらのパステル画は今までほとんど公開されたことがなく、スケッチブックは初公開となりますので、それらの実物を目にすることのできる、とても貴重な機会となります。

横須賀美術館 2024 年 7 月 13 日から 10 月 20 日 まで「第 2 期所蔵品展 特集 生誕 100 年芥川紗織」にて展示
すべて《Untitled》 制作年不明 個人蔵